このホラー漫画を読め！Vol.1　～奇想と現実の狭間で～　呪みちる「黒い清涼飲料水」

皆さん、こんにちは。ホラー好きを自称するサイト管理人koutakakahoです。

タイトルで勝手にVol.1とか付けましたが続くかは私にもわかりませんw

今回紹介したいのは、昭和レトロと欧風が見事にミックスされた耽美な世界観と繊細でありながら大胆な圧倒的画力で熱烈な支持を集める現代ホラー漫画家の第一人者、呪みちる先生（以下、敬称略）です！！

突然ですが、「おじさんコーラ」という都市伝説、もといその話を基にした漫画を知っていますか？　ネットで2ちゃんねるのような掲示板を見たことがあれば、一度はこんな一コマが貼られているのを目にしたことがあるのではないでしょうか。

「黒い清涼飲料水」より

なんだか、やばそうな雰囲気ですね・・・。

コーラ中毒になってしまったこの女の子はどうなってしまうのか？　コーラの正体は？　そして、結末は？
実は、この後コーラ売りのおじさんはいなくなってしまい、彼のコーラは麻薬入りだとか、ヤクザの収入源になっているなどと噂されるのですが、実はさらに恐ろしい真相が隠されていたのであった！！

と、これだけ煽っておいて気になることは多いでしょうが、それはさておき。

この漫画のタイトルは『黒い清涼飲料水』であり、作中に出てくる異常に中毒性の高いコーラこそが「おじさんコーラ」なのです！（いわんでもわかる）。

短編『黒い清涼飲料水』は、『口裂け女現る！　～昭和怪奇伝説～』という単行本に収録されています。これは、呪氏の3冊目の単行本になります。

しかし、残念なことに氏の初期の3冊の単行本は絶版になってしまい、中古でしか手に入らない状況です。そして、中古にもプレミアがついており中々手が出せません。

呪みちるは、何度も画廊を開くほどの高い画力の持ち主です。また、自費出版した同人誌が一冊数万円で取引されるというカルト的人気もあります。

これほどの実力がありながら一般にそれほど名前を知られていない理由は、呪みちるがデビューした当時の不幸な状況にありました。

▼解説動画作りました。よかったらごらんください▼

▼▼呪みちる先生のイベントレポートです！合わせてごらんください▼▼

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Contents

呪みちるの略歴
呪みちるの作風
その魅力
呪みちる紹介まとめ
作品紹介
参考文献

呪みちるの略歴

中学生の頃、弟が買ってきた日野日出志の「蔵六の奇病」に影響を受ける。大学中退後、フリーターをしながら本格的に投稿を開始し、ギャグ漫画家としてデビュー。1998年、『恐怖の館DX』2月号（リイド社）掲載の「時計屋敷の少女」でホラー漫画家に転向。

以降、少女ホラー誌、レディースコミック誌を中心に短編ホラー漫画を執筆している。（「Wikipedia」より）

Wikipediaの略歴は簡略すぎるので、改めて説明をしたいと思います。

90年代という時代は、空前のオカルト・ホラーブーム。ノストラダムスの大予言が世間を風靡している中、ホラー漫画専門誌も大量に発行され書店に山積みにされました（らしいです）。
しかし、90年代末になるとそのブームも陰りが見え始めます。呪氏は1998年に「時計屋敷の少女」という短編で犬木加奈子賞佳作を受賞し、デビューします（厳密には、1996年にギャグマンガで雑誌に掲載されたことはあります）。デビューしたのはいいものの、次々にホラー雑誌が廃刊に追い込まれてしまいました。そのため、呪みちるの作品はレディースコミックの端っこに細々と掲載されることになってしまったのです。

「時計屋敷の少女」より

そんな恵まれているとは言えない状況のなかでも、地道に活動を続けた呪氏。2001年、短編を集めた初の単行本『青空の悪魔円盤』が、ソフトマジックから出版されます。そのすぐ後に、2冊目の単行本『押入れのウーリー』が続きました。

しかし、このソフトマジックという出版社、あの伝説的雑誌『ガロ』の青林堂の編集者が立ち上げたのですが、経営難で2005年に倒産してしまいました。

そのため、出版された氏の2冊の単行本は中古本市場にすら中々出回らない、超希少なプレミア本になってしまいました。ここでも氏の作品は世の人の知るところにはならなかったのです。

「青空の悪魔円盤」

2冊の単行本が出版された７年後（7年後！）の2008年、今度はぶんか社から3冊目の単行本が出版されます。これが、「おじさんコーラ」の収録された『口裂け女あらわる！〜昭和怪奇伝説〜』です。

しかし、こちらも2018年現在紙媒体は絶版となってしまっています。ですが、電子書籍版であれば324円という破格の価格で入手できるので、この機会にどうぞ！

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その後は、トラッシュアップという出版社から3冊の単行本を出しています。最新作の「顔ビル/真夜中のバスラーメン」は去年9月に発売されたばかりです。呪みちるの作品はやっとこの時代になって、一般の知るところになりました。

しかし、いまだ単行本未収録作品が数多く存在しているそうです。一刻も早い単行本化が望まれますね。

呪みちるの作風

呪みちるの物語は大きく2つのタイプに分けられます。

1つ目は「おじさんコーラ」が収録されている短編集『口裂け女あらわる！～昭和怪奇伝説～』のように、都市伝説を題材に独自の解釈を加えた作品群です。

２つ目は、『人造人間の怪』に代表される奇想天外かつ耽美な空想的ストーリーです。

時代背景が明記されることは多くはないのですが、70年代～80年代の日本のイメージ。ただ、どこかで見たことのあるような日常的情景を舞台にしているにも関わらず、描かれる世界観はあまりに非現実的です。

私の知っている作品で似ていると感じるのは、丸尾末広の「ライチ光クラブ」でしょうか。この傑作も制服に身を包んだ少年たちが秘密のクラブを人知れず作り、天才的な頭脳を持つリーダー、ライチの指示のままに狂気な行動を繰り返します。日常の中の非日常が鋭く描かれています。

呪作品もそうなのです。舞台は学校だったり、職場だったりはたまたよく知っているところであったり。きわめて普通なところで異常な事件が起こるというアンバランスが、一層怖さを引き立てているのです。

また、画力は相当高く、冒頭で述べた通り画廊をたびたび開くほどです。線の濃淡をうまく活用した過剰ともとれる精緻な書き込みも特徴的で、登場人物たちは非常に美しくほれぼれします。一方、虫や小動物を描くときのグロテスクな表現は他に類を見ません。

けれども、ページをめくると怖い絵があってドッキリする（いわゆるジャンプ・スケア）、という恐怖ではありません。ですから、安心して読み進めることができます。

その魅力

呪氏の魅力、それは「女の子が可愛い」の一言に尽きます。可愛いというのは「萌え」という意味ではなく、むしろ「耽美」というべきでしょうか。

いや、別に変な意味で言っているのではなく、ホラー作品に女性はつきものです。しかし、氏の描く女の子ほどエーロスな雰囲気を漂わせているのは、他には中々見かけません。

呪作品の女の子は、魅力的なだけではありません。一癖も二癖もある‘‘つわもの‘‘ぞろいなのです。例えば、転校生の正体が蛇だったり（「呪いのグレートハンティング」）、姉が人造人間を作ったり、（「人造人間の怪」）、ジェリービーンズの食べ過ぎで子供を殺してしまったり（「七色の脳みそ」）するのです。また、百合要素を含む作品も多いです。

とはいえ、それほど異常な人物ばかりだと物語が破綻しそうですが、そうならないのも、氏の卓越したストーリーテリングの才があってのこと。

都市伝説を題材にしたシリーズでは、聞いたことのある話だと思っても二転三転する展開やあっと驚くオチが用意されており、最後まで気が抜けません。冒頭で紹介した「おじさんコーラ」もいわゆる「よくあるオチ」ではない、なんとも後味の悪い結末が待っています。

とはいえ、作品ひとつひとつは短く読みやすいので誰にでもおススメできます。

特に今年2018年度に出た、最新の単行本顔ビル/真夜中のバスラーメンは、呪みちるの未収録作品が盛りだくさんで、読み応え抜群です。

今なら、単行本もかなり入手しやすいのでぜひこの機会にいかがでしょうか？